駿河和染の技
麻機、賤機、服織など布に関する地名が多い静岡市は、古くから織物が盛んな街でした。
この地の染物の源流は、三代将軍家光の時代に集められた職人の中に、
様々な和染の技術を持った人たちがいたことに端を発します。
型絵染で人間国宝に認定され、生活美のデザイナーとも称される芹沢銈介氏も静岡市の出身です。
駿河和染は、そうした古来の技法を継承しながら、
新しい色彩芸術を目指した染物の総称で、
「型染」「筒描き」「蝋けつ染」「草木染」「茶染」など様々な染め方が存在します。
駿河和染について、いとう染工の伊藤氏が古民家を改装した工房で話してくれました。
淡く、深く、思いのままに
染め上げる。
駿河和染で使われる主な染料は、藍です。
藍はタデ科の一年草、蓼藍(たであい)の葉を刈り取り醗酵させ蒅(すくも)にし、さらに灰汁などを加えてカメで醗酵させてつくります。
そのカメに生地を泳がせ持ち上げると、空気にふれた藍は酸化して発色するのです。
藍は染める回数によって、淡い青から深い紺まで豊かな表現ができるので、これだと思える色合いになるまで何度も何度も染め直します。
紙、布、皮、木材など、ほとんどの自然素材が染色可能です。
様々な技法で描き出す
多彩な景色。
様々な模様や柄は、染料の浸透を防ぐ糊や蝋を使って描き出しています。
型染めは切り絵のような型の上から糊を塗り、筒染は糊をフリーハンドで置いていく手法です。
蝋けつ染は、溶かした蝋の温度や塗った厚みで防染具合を変えていくことが特徴です。
多色使いの場合は、重ねる色の数だけ染めることになります。
鮮やかな着色部分と、素材そのままの無着色部分。
その力強いコントラストが、駿河和染の魅力だと思います。
今の暮らしの中でこそ映える、
駿河和染。
静岡の染物の歴史は長いです。
私の家も、江戸時代から代々染物屋を営んできました。
駿河和染の職人たちは、そこで受け継がれてきた技術は継承しつつ、今の暮らしにあった物づくりをしたいと考えています。
着物や浴衣、暖簾などに限らず、もっと暮らしの中へ。
例えば、リビングに駿河和染の商品が一つあるだけで、日常の景色はガラリと変わります。
私たちが提案する新しい伝統工芸品を、ぜひ普段づかいにしてください。