駿河漆器の技
今川時代、静岡ではすでに大名のための漆器づくりが始まっていました。
しかし、漆器が産業になったのは、徳川三代将軍家光の時代。
浅間神社造営のために、全国から腕利きの漆工が集められたことがきっかけです。
彼らが温暖なこの地を気に入り定着。その技術を広く伝えたといわれています。
幕府の保護を受けて成長し、1867年(慶應3年)のパリ万博にも出品。人気を博しました。
現代の漆工は、こうした伝統を受け継ぎながら、新しい可能性を追求しています。
駿河漆器について、わかりやすく解説してくれたのは、鳥羽漆芸の漆工の鳥羽氏です。
駿河漆器ならではの、
美しさの選択肢。
漆は、漆の木の樹液を精製してつくられる自然の塗料です。
木材や和紙、布や動物の皮などに漆を塗ると強度が増し、腐らなくなるので、当初は機能性を求めて塗られていました。
時を経て美しさも求めるようになると、様々な技法・変り塗りが発展していきました。
駿河漆器の特徴の一つに、錫梨子地塗(すずなしじぬり)、金剛石目塗(こんごういしめぬり)、珊瑚塗(さんごぬり)や蜻蛉塗(せいれいぬり)など、変り塗りの豊富さがあります。
手にしっくり馴染むのは、
人の手でつくるから。
木製品を例にとると、漆塗りの基本的な工程は、下地・塗り・研磨に分かれます。そのすべてが手作業です。
下地の段階では、漆は木材とその表面を平らにするために用いられる砥粉などを結び付ける接着剤の役割を果たします。
塗りの段階では塗料として機能し、下塗り・中塗り・上塗りを重ねながら、表面に層をつくります。
最後に刷毛目を消すために、研磨をすると鏡のように仕上がるのです。
同じ木材を使っても、塗りの回数や、混ぜ物を変えることで、漆器は様々な表情を見せてくれます。
代々受け継げる
サスティナブルな実用品。
漆器は高級でもったいないから使わない。それが一番もったいない。
漆器は丈夫で長持ちです。壊れても、修理ができます。
そこが魅力ですが、職人にとっては怖さもあります。
下手な仕事をすれば、長年にわたって駿河漆器の評判を落とすことになりかねませんから。
漆器づくりは、一つひとつは単純な作業です。それらを緻密に、幾重にも積み上げていく積み木の様なもの。
ひとつ狂えばすべてが崩れてしまう。だからこそ、丁寧な仕事を心掛けています。
伝統的な素材と技術、そこに今を生きる私たちの感性を加えて、未来につながる漆器を模索していきます。